2012年
11月
6日
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01:00
Europe/Amsterdam

30周年を迎えたメルセデス・ベンツ コンパクトクラス (W 201モデルシリーズ)

・ 1982年11月発表
・ 新型コンパクトクラスとしてベンチマークに
・ シャープなデザインと先進技術を採用
1982年11月末、メルセデス・ベンツはW 201モデルシリーズの190および190 Eを報道陣向けに披露しました。コンパクトなボディに革新技術を満載したこのセダンは、従来のミディアムクラスおよびSクラスを補うメルセデス・ベンツの第3のモデルシリーズとして開発されたもので、乗用車ラインアップ拡張の先駆けとしてメルセデスブランドの未来を指し示すものでした。このクルマは社内で設定していたコンパクトクラスという車種(1993年のW 202シリーズからはCクラス)の第1弾となっただけでなく、メルセデス・ベンツの大規模なモデル攻勢の始まりを告げる、斬新で先進的なセダンだったからです。
W 201モデルシリーズのセダンは、デビューから約30年をへた現在においてもその強みを確実に維持しており、そのシャープなラインは時を超越した現代的なデザインとして高く評価されています。今振り返ると、このクルマは技術面においても、数多くの革新的なアイデアやコンセプトを盛り込んだものでした。
「ベビーベンツ」の愛称で親しまれた190は、ブルーノ・サッコが手がけた現代的デザインに加え、すぐれたパッシブセーフティや高度なサスペンション、卓越した空力特性、巧みな軽量設計を備えていました。とりわけ、独立懸架マルチリンク式リアサスペンションは、メルセデス・ベンツが190のために独自に開発し、特許を取得した技術です。具体的には、左右のリアホイールを5本の独立したリンクで支持することで、すぐれた走行快適性と精密なハンドリングを同時に実現したものでした。
メルセデス・ベンツの設計開発部門では、このコンパクトクラスをさらに進化させるべく、フェイスリフトを1988年と1991年の2回実施しました。そして発売から10年以上をへた1993年2月、初代コンパクトクラスはジンデルフィンゲン工場での生産を終了しました。しかし、ブレーメン工場では同年8月まで、主に輸出向けに引き続き生産が行われました。累計生産台数は187万9,629台と、新型コンパクトクラスとして大きな支持をいただいたことをはっきりと示しています。1993年には、後継モデルとしてCクラス(W 202シリーズ)が発表されました。
W 201モデルシリーズの進化
新しいモデルシリーズの発表後、1983年に最初に発売されたのは190と190 Eの2モデルのみでした。エンジンはいずれも2リッター4気筒ガソリンエンジンを搭載していました(最高出力は190が66kW/90hp、190Eが90kW/122hp)。ついで1983年秋、フランクフルト・モーターショーにおいて最高出力53kW/72hpの190 D(「ささやくディーゼル」)が登場。高効率を達成するとともに、エンジン防音対策によりきわめてすぐれた静粛性を実現した4気筒ディーゼルとして、大きな注目を集めました。
1983年にはこのほか、新開発4バルブシリンダーヘッドを採用した190 E 2.3-16(最高出力136kW/185hp)も登場しました。このW 201フラッグシップモデルはスポーツ性能に非常にすぐれ、1983年夏にはイタリアのナルドサーキットで、2万5,000km、2万5,000マイル、5万km超を平均速度約250km/hで走破するなど、いくつかの長距離世界記録を叩き出しました。
その後、コンパクトクラスのラインアップは一貫して拡張され、190 D 2.2や190 E 2.3などの輸出モデルも導入されました(主に北米向け)。全体的に見るとW 201の性能は、5気筒190 D 2.5(1985年、最高出力66kW/90hp)や、コンパクトクラス初の6気筒モデル190 E 2.6(1986年、122kW/166hp)など、多くの新モデルの登場にともない、生産期間にわたって継続的に改善されました。
性能面で最高峰を究めたのは1988年の190 E 2.5-16(最高出力143kW/195hp)でしたが、このモデルはその後も進化を遂げ、最高出力は173kW/235hpにまで達しました。同時にこれらのモデルはレース用ツーリングカーの基礎を築き、メルセデス・ベンツに数々の勝利をもたらしました。そしてついに1992年にはドイツツーリングカー選手権(DTM)でクラウス・ルートヴィッヒがAMGメルセデス190 E 2.5-16 Evolution IIをドライブし、栄冠を手にしました。
1983年、自動車専門誌「アウト・モトール・ウント・シュポルト」は新型コンパクトクラスについて、「世界で最も古い自動車メーカーのこの新車ほど注目を集め、世の好奇心を掻き立てているクルマはない」と伝えています。モダンで斬新、しかも技術的優位性を狙ったコンパクトクラス。メルセデス・ベンツはこのクルマによって新市場に参入し、当時の一般ユーザーや専門家を熱狂させました。その魅力は今も失われることなく、発表から約30年をへた今日でも、W201は若々しい「現代のクラシック」として高い評価を受けています。